『セイキマツブルー』ヒロタシンタロウ

竹熊健太郎推薦という帯で、竹熊健太郎だったら騙されたとしてもかまわないなと思い、買ってみた。
表題作と「怪虫の夏」の二編が収録されている。表題作の「セイキマツブルー」はタイトルにブルーとついているだけあってか黒ではなく青い色で印刷されている。僕は電子書籍で買ったのでまずはIPadで普通に読んで、その後で電子ペーパーのkindle端末で黒い絵として読んでみた。比べてみると青い絵として描かれることでの劇的な効果というのはないけれども、それでもこの物語はやはり青い絵で描かれるほうがしっくりと来ることがわかる。

1999年7月、世界滅亡の引き金は私と私の友人だった…。

まず、21世紀になってかなり経つというのに1999年を舞台としているというのがすごいなあと思う。いや、1999年を舞台とするのが悪いというわけではないのだけれども、1999年という、アンゴルモアの大王が世界を滅ぼすという話が今での通用するのだということに驚いた。もちろん僕は小学生の時にノストラダムスの大予言の洗礼を受けた人間なので好意的に受け取っているのだけれども、ノストラダムスの大予言の洗礼を受けずに育った人たちも多くなっている今現在、そういった人たちにどのように受け入れられるのだろうか。
特別突き抜けた部分はないけれども、欠点もまったくない。残酷で切ない話でありながらかわいらしい絵柄のおかげで、万人におすすめできるところも好感が持てる。
併録された「怪虫の夏」のほうは、虫になってしまった恋人と、それでも彼を愛し続ける主人公の物語で、こちらも怪奇幻想な話なのだが、なぜ虫になってしまったのかそれとも虫になってしまったと思っているのは主人公だけで、恋人は本当は虫になってなどいないのではないのではないかと曖昧なままに話がすすんでいくところが面白い。

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