『角の男 2』山うた

何巻か続くのかとおもったらきれいに二巻で終わった。
角を持つ人間と角を持たない人間。
持たない人間のほうが持つ人間を虐げ、奴隷として使役させている世界。
主人公は角を持たない人間なのだが母親に捨てられ幼少期を角を持つ人達と一緒に過ごす。そこでは角を持たない人間のほうが虐げられているのだが、主人公を助ける人もいて彼らとともに成長していった。
しかしそんな僅かな幸せも長くは続かず、主人公は再び角を持たない人たちの世界へと連れ戻され、角を持つ人達の村は焼き払われてしまう。
それが前巻のお話で、二巻では成長した主人公が贖罪として角を持つ人達を救おうという物語が語られる。
自分自身を追い詰める主人公の生き方は相変わらずヒリヒリとした切なさと苦しみを伴い、それは前作『兎が二匹』でも共通した要素でもある。
自分にとって一番大切な人を助けるための自己犠牲だ。
角を持っているからといって角を持たない人間よりも特別の力があるのかといえばそんなことはない。だから角を持たない人間と持つ人間は対等であるべきなのだが、そういう方向には進まない。
だから主人公たちの境遇を変える劇的なことというのは起こらない。そういう状況が読んでいてよけいに辛くなる。
ああ、ひょっとしてこれはハッピーエンドにはならないんじゃないのか。
そんな読み手の思惑などお構いなしに物語は進んでいく。そして、ああ、この物語を読んで良かったと安堵する。

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