『深海の宇宙怪獣』スタージョン

ふとした偶然からシオドア・スタージョンの『原子力潜水艦シービュー号』を福島正実が児童向けにリライトした本があることを知った。それが『深海の宇宙怪獣』だ。
しかしそこで疑問に思ったのは『原子力潜水艦シービュー号』では宇宙怪獣など登場しないのになぜ『深海の宇宙怪獣』というタイトルなのかということだった。
偶然にもこの本の一部だけをネット上で見ることができて、そこには確かに主人公がレーザーガンでもってなにかと戦っている場面があった。もちろん『原子力潜水艦シービュー号』ではレーザーガンなど登場しない。
かつて福島正実はT・L・シャーレッドの「努力」という短編を『タイムカメラの秘密』という題名で児童向けにリライトしたことがあったが、これもラストを改変していたということがあったので、今回も福島正実は大幅に改変してしまったのだろうと思っていた。
で、どのくらい改変しているのか気になったのだけれどもなかなか現物を手に取る機会がなかった。古書としても世にでることがなかったし、地元の図書館でも置いていない。半ば諦めていたところでヤフオクに出品されているのを見つけたので落札してしまった。
で、届いた実物を読んでみて、予想以上の代物だったのでおどろいた。
スタージョンの『原子力潜水艦シービュー号』での物語はこの本の中では、回想シーンとしてわずか4ページしか語られていない。あくまで回想シーンあのでメインの物語はまったく別なのだ。いやはや、これはスタージョンの名前を出す必要があるのかというか出してはまずいだろうと思うのだが、昔はこういうことがたまにあった。おそらくはテレビドラマ版の『原子力潜水艦シービュー号』のエピソードをノベライズしたものなのだろうと思う。
ということで、今回の話は、宇宙から飛来した脳型宇宙人が精神エネルギーでもってシービュー号のメンバーを操って、人類を奴隷化しようとする話と、マッドサイエンティストが人間そっくりのアンドロイドを作り、シービュー号のボスであるネルソン提督を拉致してその精神と知識をコピーし入れ替わらせて、世界各国に核ミサイルを落とそうとする話の二本立て。長いこと気になっていた疑問が氷解したのはいいけれども、面白いかといえば大人の読み物としては全く面白くない。


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