ときどきこういうおかしな、ここでいうおかしなというのは悪い意味ではないのだが、そういう話を書く人がいるので新しい作家と出会うことは楽しい。
文庫本にして100ページと少し。その中に13編の短編が収められているけれどもこの本のタイトルである「嵐のピクニック」という題名の話は存在しない。世の中の短編集には、収録されている作品のタイトルを本のタイトルにつける場合とつけない場合があってこの本の場合は後者だ。そういった場合、どうしてそんなタイトルをつけたのか気になることもあるが、気にしたところで作者が種明かししてくれない限りわからない。
あえて考えて見るならば、収録作に「タイフーン」と「いかにして私がピクニックシートを見るたび、くすりとしてしまうようになったか」という作品があるので、この二つが作者のお気に入りだったからなのかもしれない。
幼稚園の時からピアノを習い続けていながらもやる気がまったくなくって、それでいてピアノを習うことをやめようとはしない主人公に、どのピアノ教室も教えることを断られてしまう。そんな中、個人で教えているピアノの先生がいてその家に教えてもらいに行くのだが、その先生が彼女に教えた方法は……。
ちょっとゾクリとする「アウトサイド」という話から始まり、こういう傾向の話なのかと思っているとその次の「私は名前で呼んでる」もそういった傾向だったわけだが、その次でひっくり返る。
そもそも三話目の題名は「パプリカ次郎」である。
「Q&A」のような抱腹絶倒の話もあるかと思えば「マゴッチギャオの夜、いつも通り」のようなキリッとした話もある。
腑に落ちる話もある反面、腑に落ちない、モヤモヤとした感じが残ったままのものもあって、面白い。
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