なんとなくなんだけれども、この本のタイトルを見たときに、田嶋春というちょっと性格に難のある変人が日常の謎を解くという話だと思いこんでしまっていた。
しかし、白河三兎がそういうオーソドックスなミステリを書くはずもないわけで、少なくとも今のところは、なので、実際に読んでみると思っていたものとはほとんど違っていた。
田嶋春という名前からインドにあるタージ・マハルとなんらかの関係があるのだろうかと思ったのだが、そんなに密接には関係はしない。ただ、罪を懺悔したものが、その罪を許され自由となるという点では、田嶋春と関わった人物はそのとおりになる。
空気が読めなく、そのおかげで人が触れては欲しくない部分に土足で入り込む主人公、田嶋春。五篇からなる連作短編は彼女の視点ではなく、彼女と関わってしまった人物の視点で描かれるので、彼女がどんなことを考えて行動しているのかということはわからない。ただ、空気を読まないが故に、関わり合いたくない人物であるということははっきりと描かれる。しかしそんな彼女だが、観察力と記憶力は素晴らしく、それゆえに、自分が気になったことに対して、人の迷惑顧みず踏み込んでいってしまう。なおかつ彼女に悪意はなくそして正論であるので面と向かって誰も言い返すことができない。
そしてそんな彼女の行動から日常の何気ない謎が明らかにされていく。ただ、彼女自身は謎だと思っていないので、彼女とか変わってしまった人物のほうが、彼女の行動や言動から謎を解き明かすことになる。
そして最終話、いつもの白河三兎の物語で得ることができる、すがすがしく、気持ちの良いラストを迎える。
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