ここしばらく海外のSF小説ばかり読んでいたせいか『裸の華』がすごくスルッと頭に入ってきて心地よい。
もちろんそれだけが理由ではなくって、桜木紫乃の他の作品と比べて『裸の華』の主人公がかっこいいという理由も大きい。
今回の主人公は元ストリッパー。舞台で怪我をして足を骨折してしまう。手術をして怪我は良くなったのだが、心の怪我は治らず、ある程度までは以前と同様に踊ることができるが、一線を越えようとするとそこで怪我をしたときのことを思い出して足をかばってしまう。
ストリッパーとしての自分は終わったのだと札幌に戻り、そこでダンスショーの店を開くことを決意する。ダンサーを二人、バーテンダーを一人雇って、ダンサーの二人には自分の技術を教え込む。ただし、主人公の技術はストリッパーとしての技術で、そして彼女が開く店はストリップ劇場ではない。だから主人公自身も手探りで教えることになるのだが、同時に雇ったダンサーたちの才能に困惑も覚える。今までは自分自身の技術を磨くことだけを考えていればよかったのだが、今度は教える立場なのである。
主人公自身の人生にダンサーたちの人生、そしてバーテンダーの人生が少しづつ明らかになっていく。登場人物たちにはそれぞれの人生があってそれは順風満帆な人生ではない。が、これまでの桜木紫乃の物語に比べると爽やかなのだ。おそらくは挫折した主人公の再起の物語だということがその爽やかさの一番の理由なのだろう。
もっと彼女たちの人生を見てみたい。そんな気持ちになる。
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