『夜の終る時/熱い死角』結城昌治

『あるフィルムの背景 ミステリ短篇傑作選』の売れ行きが良かったようで同じ版元からもう一冊出てくれた。
結城昌治がまだ現役だったころは結城昌治の小説は読んでこなかったのだが、まあ、それはタイミングの悪さだったのだろうと思う。
というのもその後、東京創元社や光文社から文庫として復刊がされて、そのときにはすべて買って読んだからだ。すべて買ったということはそれだけ面白かったということなのだが、まあ殆どの場合、復刊するものは傑作を選んで復刊するのだから、面白くないはずはない。
とはいっても結城昌治は後の方になると時代物を書くようになっていくので、流石に今のところは底までは食指が動かないけれども、まだまだそれ以外の作品も残っていたようで、この『夜の終る時』は面白かった。
作者のあとがきを読むと、悪徳警官ものを目指しながらも結果的にはそこまで非情になれなかった、と書かれている。確かに読み終えてみると、小市民の悲哀的な悲しさがあって、カラリと乾いているのではなくじっとり湿っている読後感だ。
二部構成になっていて第二部が犯人側の視点で描かれているのがその一番の理由だけれども、そういった部分が日本人っぽくって悪くない。
読んでいて驚いたのはソープランドという言葉が使われていたことだ。この話が書かれたのはソープランドという言葉ができる前のことだと思いこんでいたので昭和という時代の感覚がずれ込んでしまった。
しかし、調べてみるとソープランドという言葉が使われる前に書かれた話で、つまるところ、再販したときに書き直されたのだろう。しかし併録された他の短編ではソープランドではなくトルコ風呂という言葉が使われていたので、こちらの短編の方は再販されることがなかったのか、書きなおされる機会がなかったのだろう。

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