芦沢央の『許されようとは思いません』が評判がいいようなので、とりあえずその前に文庫化されている同じ作者の『悪いものが、来ませんように』の方を読んでみた。
子供がほしいと望んでいながらも不妊に悩む紗英と、彼女が子供の頃から親しい関係の奈津子。二人が主人公だ。
紗英には不妊の他に夫の浮気という悩みも抱えている。一方、奈津子のほうは結婚して家庭に入り、子供を産み、育てている。
どちらも結婚はしているが、一方は仕事をしながら不妊と浮気に悩み、一方は幸せな家庭を営んでいるように見えるが夫の理解を得られてはおらず、見た目の幸せからは程遠い生活を送っている。
接点のなさそうな二人の関係が語られていく中、紗英の夫が死ぬ。
殺されるのである。
誰が殺したのか。
何故殺したのか。
ということはこの物語においては些細な問題である。いや終盤までは些細な問題だ。
主人公の二人の双方の視点から語られる物語は終盤に近くにおいて、二人の関係を一変させる展開を見せる。ところどころで違和感を感じていた部分が氷解するのである。そして些細な問題と思われた部分が最後の最後に二人にとっては重要な問題だったことに読者は気がつく。
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