買って読まなければいけないなあと思っているうちに文庫化されてしまった。
で、文庫化されたので早速買って読んでみたのだが、これは単行本の方を買うべきだったかなあとちょっと後悔した。
というのも文庫化されるにあたって挿絵が省略されてしまったわけで、もちろん挿絵がなくても物語としては支障はないけれども、でもこの本の場合は挿絵も存在するという前提で書かれているという部分もなきにしもあらずだからだ。
しかし一方で、森見登美彦の解説が存在していて、いやもうこれは解説をつけるとしたら森見登美彦しかいないんじゃないかと思うくらいの内容でもあるので、しょうがないなあと諦めることにする。
物語の主人公は中学生なのだが、韜晦的でいうなれば中二病だ。そんな彼の視点で描かれる物語は時としてくどく、七面倒臭い。そして文章そのものもそうなのだが、その文章のレイアウトも清涼院流水の小説を彷彿させるような凝ったレイアウトだったりする。
それでいて決して読みづらくはなく、むしろそういった要素すべてが中二病の中学生という存在を際立たせている。
表面的な物語はB級映画っぽさがあって、これもまたいい雰囲気を醸し出している。
結局の所、主人公たちは中学生でしかなく、異星人による地球侵略というとんでもない出来事に対して何ができるのかといえばなにもできない。だけれども何の変哲もない日常がいきなり非日常となってしまった中で、それまでは見ないということで無意識に避けてきた見てしまえば壊れてしまうかもしれない日常に対して、否が応でも見なければいけなくなってしまった主人公の倒錯した挫折の物語はいろいろな意味でよく分かる。モンティ・パイソンの黒騎士みたいではあるけれど。
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