パンデミックを扱った物語というのがわりと好きだ。パンデミックというのは広範囲に広がる流行病のことでペストとか、身近なところではインフルエンザもそうだ。
小説でいうと小松左京の『復活の日』とか、マイクル・クライトンの『アンドロメダ病原体』とか。
それは多分、僕の好きな破滅SFつまりひょっとしたら人類が滅亡してしまうんじゃないかということに繋がるからだと思う。
そしてそれと同時に、人類の叡智を集結して流行病を食い止めるという物語の展開が好きなのだ。
朱戸アオの『リウーを待ちながら』もそのひとつ。サミュエル・ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』を彷彿する題名。
『ゴドーを待ちながら』は読んだことがないけれどもタイトルぐらいは知っている。ではここで待っているリウ―とは誰なのか。
物語は現代の日本。富士山の麓の架空の街でペストが大発生する。架空の伝染病ではないところからこの物語はSFではない。つまり現在の医学のレベルでもってペスト菌と対決することになる。
ペスト菌ならば大丈夫なんじゃないかというのは認識が甘くって、僕たち人類はペスト菌に対してもほとんど無力なのだ。そしてペスト菌が相手ということでカミュの『ペスト』が引き合いに出される。そこでリウ―が『ペスト』の中で登場した医師の名前であることがわかる。ではこの物語では誰がリウ―の役目を負うのか。
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