『三体』劉慈欣

まあとにかく評判がいい。なにしろヒューゴー賞を受賞したぐらい、といってもヒューゴー賞を受賞したからといって必ずしも面白いというわけでもないけれども、しかし中国で書かれたSF小説がアメリカのSF賞を受賞するなんてことは今までなかった。
もっともこれもヒューゴー賞にまつわるいろいろな事情があったりするので、その反動の結果という意見もあるけれど。
それはともかくとして、自分にとって面白いかどうかというのはそんな外部の評価とは別で、実際に読んでみなければわからない。
期待が大きすぎるとがっかりしてしまうということはたまにある。
で、できるだけ期待は抑えて読んでみたところまず、思っていた以上に読みやすかった。中国で書かれた小説なので登場人物は中国人が大半だけれども、登場人物の名前で混乱することもほとんどない。
文化大革命という過去の中国の時代から始まりながらも、それに対しての歴史的な知識があまりなくても全然問題ない。何気ないけれどもこの読みやすさというのは只者ではない。
しかし肝心の内容の方はというと手放しで面白いかったかというと少し微妙なところで、それは結局、登場人物の描かれ方のバランスが悪いという点じゃないかと思う。もちろん登場人物の一人はとても重要な役割を担っているのでとその人物に紙面が割かれるのは当然のことなんだけれども、その一方でもうひとりの主役のほうはというとなおざりな感じがする。そのほかの登場人物に関しても、重要そうな雰囲気を醸し出していながらあっさりと舞台から退場してしまったり、重厚さと軽さが両極端なのだ。
まあそのあたりは好き嫌いの問題に過ぎないかもしれないし、なにしろまだ序盤にすぎない。

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