『先生の白い嘘』は扱っている題材が題材なのでちょっと敬遠していて、『おんなのいえ』は二巻まで読んだけれども、これはこれで面白いけれどピンとくるものがなく、『ロマンス暴風域』はまだ手を出していない。そんななかで『マンダリン・ジプシーキャットの籠城』はちょっとこれはいいなと思っていて鳥飼茜は僕の中で気になる作家になっていったわけだがここに来て新作『サターンリターン』の一巻が出た。たまたま雑誌で一話目を目にして、ちょっとこれはひょっとするとすごい話になるんじゃないかと感じていたので、さっそく読んでみた。
30歳になるまでに死ぬと予告した元彼。主人公は作家だが一作だけしか作品を書いておらずそれ以降は沈黙したまま。編集者らしい男性と結婚しているが二人の間に子供はいない。夫のほうは欲しがっているし、主人公もそれを受け入れているようだが、ちょっといびつな夫婦関係の様相をみせている。しかし作品を発表していなくても編集者との付き合いは継続していて新しい編集者が彼女の担当となる。そんなあるとき、元彼が自殺したことを知る。彼は予告どおりに死んだのだ。そして主人公が書いた唯一の小説は彼のために書いたものだった。
なぜ元彼は死んだのかという謎もそうなのだが、主人公と主人公を取り巻く人々も一筋縄ではいかない一癖も二癖もある人物ばかりだ。
そもそも主人公自身がなにかを抱えている。というか失うことを求めているらしい。いったいどういう物語になるのだろう。
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