かつてワクワクした場所

ここ数年、行動範囲が変わってしまったので行くことが減ってしまっていた書店がいつの間にか閉店していたことを知った。最後にその店に訪れたのは先月の時初めごろだった。なので店のどこかに閉店のお知らせが貼られていたはずだが、まさか閉店するなどとは思いもよらなかったのでそんなものには気がつかなかったのだ。
欲しい新刊が発売されて、おそらくその店ならば手に入れることができるだろうと思い仕事帰りに寄ってみて、空っぽの駐車場、真っ暗な店内を見て閉店してしまったことを知った。
最後に買ったのはトニー・ヴァレントの『ラディアン 11巻』だった。発売されていたのに気がつかなくってアメコミの棚に行ってそこで発見して初めて新刊が出ていたことに気がついたくらいだ。
インターネットがあれば新刊情報くらい手に入ると思うかもしれないが見逃してしまうこともある。そういった場合、実際の書店というのはありがたい。さらにいえば『ラディアン 10巻』も出ていたことに気がつかなくって11巻を読み始めて物語がつながっていないことで初めて10巻も出ていたことに気がついたくらいだ。
なによりもこの店は僕が10代の頃からよく行っていた店だったので思い出深い店だった。品揃えが他の書店と少し違っていたので重宝していたし、コミックが充実していて、日本の漫画だけではなくアメコミも充実していたのはありがたかった。もっとも地方の書店でアメコミなんかに力を入れているから閉店になってしまうんだという気持ちもあるけれども。あとミステリマガジンもおいてある書店だった。なぜかSFマガジンのほうはおいてなかったんだけれども、それとも僕が行く前に誰かが買ってしまっていたのかもしれないが。
考えてみると僕の住む市では10代の頃から随分とたくさんの書店が消えていってしまった。ざっと数えてみても23店舗くらいが閉店になってしまっている。もっともこの中には10代以降に開店してそして閉店になってしまった店もあるので、10代のころに存在していてそれで閉店になってしまった店だけとなるとこの半分以下なのだが、その代わりに新たに開店した店の数はというと3件くらいだ。閉店していった店の大半は個人経営の書店だったが店ごとに品揃えが異なっていて、もちろん店の大きさは小さいので本の点数も少なかったけれども書店のハシゴをすれば欲しい本が手に入ることができた。
もちろん地方の書店だと入荷しない本もたくさんあるのだけれども、それでもネットで発見するよりも実際の書店で発見する楽しみというのはまだまだ残されている。
なかなか文庫化されないことに業を煮やしてハードカバー版の『アルジャーノンに花束を』を買ったのもこの店だった。大原まり子の『ハイブリッド・チャイルド』のハードカバー版を買ったのもこの店だ。綾辻行人のデビュー作『十角館の殺人』のノベルズ版や法月綸太郎の『密閉教室』に出会って新本格の存在を知ったのもこの店だった。
思い出は尽きない。
振り返るとまだまだ思い出す本が出てくるし、当時のワクワクした気持ちもよみがえってくる。
そう、この店は最後の最後まで僕をワクワクさせてくれる場所だった。

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