『5分間SF』草上仁

東京創元社がフレドリック・ブラウンSF短編全集を出すというニュースを見たときに、だったら早川書房には草上仁短編全集を出してもらいたいなあと思った。
というのもかつて草上仁は日本のフレドリック・ブラウンといわれていたからだ。
いまでこそ新刊がでなくなってしまっているが、SFマガジンでは短編が掲載されることも少なくなく、雑誌に掲載されたままで終わってしまっている短編もかなりあるはずだ。
とそんなことを思っていたらさすがに全集は無理だったけれども新刊が出ることになった。
手に取りやすいということを主体としたせいか若干薄めの文庫本だけれども文句は言いまい。問題は中身だ。
通して読んでみると内容のバランスがいい。オチが効いているものもあれば全編笑いに満ちたものもある。ほんわかとする良い話もあって、巻末の初出一覧を見れば、なるほど発表年が多岐に渡っている。そして驚くべきことに描き下ろしもあるのだ。
もっとも、タイトルである『5分間SF』は嘘で実際には5分で読むことができない話ばかりだ。それに「マダム・フィクスの宇宙お料理教室」はシリーズ物なのにこの本に収録されたのはそのうちの一つしかない。バランスを考えればやむを得なかったということもわかるけれども、残りの話はどうなるんだろうかと心配になる。いやそもそも草上仁の次の本は出るのだろうか。

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