『壜の中のメッセージ』山川健一

山川健一の現時点での著作85冊が電子書籍化された。
一覧で見るとなかなか凄いのだが、僕が山川健一の作品を読んでいたのは初期のころで、途中から作風が変化して、それ以降は読んでいない。
しかし、僕にとって山川健一の小説は人生にかなり影響を与えたものばかりだ。
『壜の中のメッセージ』は最初に読んだ本。
大学生の時に読んだのだが、どうしてこの本を読む気になったのかはあまり覚えていない。おそらくは、あらすじに書かれた、DJの主人公のもとに届く、自殺予告のメッセージ。
という文章に惹かれたことは確かで、それ以前に、読んだことはないけれども似たような設定の海外のミステリ小説があるということを知っていたので、気になったのだろう。でも、あらすじなんて本を手にとってみなければ読むこともできないわけで、『壜の中のメッセージ』という題名の本をなぜ手にとって見る気になったのかはわからない。
『壜の中のメッセージ』は表題作を含めた三つの短編からなる連作短編集で主人公は同一。表題作は二話目の作品だ。
あらすじにあるようにDJをしている主人公のもとに、曲のリクエストとともに自殺予告のメッセージが届く。何時、何処で自殺するか書かれている。リクエストの曲はスティングひきいるポリスの「ソー・ロンリー」だ。
主人公が予告された場所に行ってみると一人の女の子がいた。ただし、彼女はメッセージの人ではない。主人公と同じく、誰がメッセージを書いたのか確かめに来ただけだ。
二人は待つけれども誰も来ない。
しばらくしてまたリクエストとともに自殺予告のメッセージが届く。ポリスの「壜の中のメッセージ」だ。
主人公は女の子と共に予告場所に行くが、誰も来ない。
そして三度目のメッセージが届く。
「ソー・ロンリー」。
主人公はその場所へは行かない。
主人公の友人から電話がかかってくる。
メッセージを出していたのは彼女だ。
主人公と一緒に予告場所にいた彼女だ。
そして今度は本当に実行したと。
再読してみて、あの頃に感じたのと同じものを感じることができた。
あれから30年近く経ったのだが、あの頃のせつなさと、閉塞感と息苦しさは今でも同じで、歳をとってしまったけれどもあの頃の僕と今の僕は当たり前だが地続きでつながっているのだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました