6巻まで続いた『不死の猟犬』の新刊を待っていたら『不死の稜線』というタイトルの本が出て、よくあるスピンオフなのかと思ったらこれがなんと第二部。別にタイトルまで変える必要もないんじゃないのか、紛らわしいなあと思ったりもしたけれども、それはさておいて第一部だって物語として完結したわけではなく一連のエピソードが一段落しただけで続きが気になるのに、作者はそんな読者の思いなどお構いなしにまったく別の話を描き始めた。
もっとも全く別というわけではなく第一部での主要人物は登場する。ただ物語の視点が変わっただけなのだ。
派手なアクションで一区切りついた第一部とはうってかわって静かに物語は始まる。
とはいえど、老衰以外では死ぬことのない世界で、ベクターと呼ばれる、致命的な傷を負えば死んでしまう人間が、この世界の人間に自分と同じように傷を負えば死んでしまう状態に感染させるという展開は同じで、今回はそんなベクターの側から物語が描かれる。しかしこの世界でベクターがなぜ存在するのかという部分までは描かれない。それはこの後でゆっくりと明らかになっていくのだろうけれども、第一部ではまだ明らかにされなかったこの世界の秘密は少しづつ明らかにされる。
そういった第三部への期待はもちろんのことなのだが、老衰以外では死なない世界とか、その世界の住人に普通に死を与えるベクターという存在、そういった興味深い派手な設定のなかで、殺人という概念のない世界で殺人を犯した人間の贖罪というものをこの第二部では描いたことに驚いた。いや、地味といえば地味なんだけれども、こういう丁寧に世界を構築して描く物語は素晴らしい。
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