『BEASTARS 15』板垣巴留

前巻でとうとう悪らしい悪が登場したのだが、その一方でちょっとこの世界には場違いな気もした。
というのもここで描かれた悪というのが決定的な悪で、たしかにこれまでにおいても善悪における悪の存在は描かれていたが、それでも一方的な悪ではなくこの世界における生き物としての本能的な部分と建前的な善意というか肉食動物と草食動物との共存においての歪から生まれる部分としての悪だった。だからどこかで許せる部分もあったが、今回はそうではない。
主人公のレゴシが学生であることをやめて社会人として生きていくことによって、レゴシが立ち向かわなければいけない相手もそれ相応のレベルアップの必要性があるのかな、と安易に考えたりもしたのだが、この巻を読んで、自分の浅はかさを恥じた。
そうか、そういう方向へと進んでいくのか。
というわけで、レゴシ自身の血の宿命というか、異種族間との結婚とその子どもという部分に焦点を当ててくるとは恐れ入りました。さらに今まで描かれることのなかったレゴシの母親という存在を物語の舞台に浮上させて、レゴシ自身の存在理由に揺さぶりをかける。

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