『闇の歯車』藤沢周平

藤沢周平は<隠し剣>シリーズ の二作を読んだだけだった。時代小説を書く作家なのであまり僕の守備範囲ではない作家だったけれども<隠し剣>シリーズはかなり面白かった。
とはいえども他の作品まで食指を動かすかというとそうでもなかったのだが、ふとしたことで『闇の歯車』がハドリー・チェイスばりのケイパー小説ということを耳にして早速読んでみることにした。
何件もの強盗事件を計画実行してきた男から押し込み強盗の話を持ちかけられた四人の男たちの話。四人は小さな赤提灯の常連客というだけでお互いは何も知らない。赤提灯で飲んでいても話しかけることもない。そんな生い立ちも素性もバラバラな四人の男たちが持ちかけられた犯罪の報酬目当てにその男の犯罪計画に乗ることとなる。
藤沢周平なので時代は江戸時代。そんな時代であってもこんな犯罪小説を書くことができるのだということはよくよく考えればできる話なのだが改めて読んでみるとその面白さに感動すら覚える。
もっとも実際の犯罪場面では難攻不落の場所を襲うとかそういったものはないのであっさりとしていて、そういうトリッキーな要素を期待していると肩透かしをくらってしまうが、しかし犯行が行われるまでの部分で四人の男たちのエピソードが丁寧に描かれているので犯行後に彼らにどういう結末が訪れることになるのかという部分に焦点が移っていくので面白さに問題はない。

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