石黒達昌の新刊が出た。
といっても小説ではなく、今までに書かれた小説以外の文章、エッセイやインタビュー、書評、文庫解説などを集めたものだ。
小説の新作ではなかったことは少し残念でもあるけれど、一冊にまとめることができるほどの文章がまだ残っていたことにまず驚いた。
僕が石黒達晶の存在を知ったのはハルキ文庫から『新化』が出たあとのことだったので、この本に収められた文章は仮にその当時、目にすることがあったとしても作家石黒達晶としての文章という認識などなかった。というのは鈴木光司の『らせん』の文庫解説が収録されていて、『らせん』は文庫で読んでいたのにその解説が石黒達晶だったという認識などなかったからで、『らせん』の文庫解説の文章を目にして驚いたのなんの。
その他にも読んだことのある文庫本の解説があって、寡作な作家というイメージは払拭してしまった。
とにかくありったけ、かどうかはわからないけれども、本としてまとまっていない文章を集めただけあってか、書評に関しては、同じ本の書評をあちらこちらの媒体に書いていたことがわかって、媒体に応じてその内容に多少の変化があって、その違いの変化の部分が面白い。
都筑道夫の短編に「風見鶏」という短編があるのだが、これは3回書き直されていて3つのバージョンが存在する。メインとなるストーリーは同じだけれども、小説の長さや設定が異なっていてどれが一番いいのかとは一概にいえないのだが、この本に収められたものもそういったものに近いのだろうか。
書評するうえでの本に対するアプローチの仕方というのは石黒達晶の小説と同じで論理的でなるほどなあと思わせられる。
次は新作の小説を読みたい。
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