ホラーでありながらSFで、シュールなギャグでもありそれ以外のなにかでもあったハイブリッドホラーだった『恐怖の口が目女』を描いた崇山祟の新作は乙一が脚本・監督をした映画『シライサン』のコミカライズだったので驚いた。コミカライズといっても映画とは内容が異なっているらしいので、ホラーとしての設定だけ共通のオリジナルになるのだが、映画『シライサン』は正統派のホラーのようなので『恐怖の口が目女』の作者に依頼するってのはすごいなあと思わざるを得ない。
個人的には前作のようなものを期待していたのだが、読んでみると思いの外正当なホラーで、拍子抜けしてしまう部分は正直なところあった。しかし、ホラーとしての王道を進みながらも要所要所でギャグが挟み込まれ、というか登場人物たちはやはり崇山祟の描くキャラクターなので正当なホラーのキャラクターではないのだ。しかしそれが不自然にもならず、物語全体の半分もいかないうちからシライサンとの最終対決へと進んでいき、登場人物たちはそれぞれに見せ場を設けながらも次々とシライサンの前に倒れていくあたりは前作を彷彿させる部分もある。
シライサンとの対決が全体の6割を占めるなどと物語の配分がいびつすぎるんじゃないかと思うのだが、しかしシライサンを倒すための方法がそのまま主人公の過去と重なり合う部分といい、じつによくできている。
次回作も楽しみだなあ。
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