久しぶりにブリジット・オベールを読みたくなったので古書を探して購入。
主人公エリーズはテロに合い、恋人を失ったうえに全身麻痺、目も見えず言葉もしゃべることができなくなってしまった。彼女ができることは聞くこと、そして左手の人差し指をわずかに動かすことだけだ。
彼女の叔父が手を尽くしてくれた結果、エリーズはそんな状態でも介護を受けて生きていくことができた。
そんなある日、エリーズは一人の少女と出会う。少女はエリーズに、森の死神が子どもたちを次々と殺している。私は森の死神を見た。と言う。子供のいたずらだと思ったエリーズなのだが、ラジオから流れるニュースで、子どもたちが殺される殺人事件が起きていることを知る。そしてその中には少女が言った子供の名前も含まれていた。
本当に誰かがこの町で子どもたちを殺しているのだ。そしてそれを知っているのは一人の少女だけだ。
ということでエリーズはなんとかしなければと思うのだが、そもそも彼女にはコミュニケーションを取る手段がない。そうこうしているうちに彼女の身の上にも不審なことが起こり始める。
なかなか強烈なサスペンスだ。目も見えずしゃべることもできない主人公の視点で物語が語られるせいで、語られる物語は細部があいまいなままだ。それでいてブリジット・オベールの手際が良いので少しづつ手がかりが与えられていく。そして次々と事件が起こっていくので単調にはならない。
とはいえども、いくら手がかりが主人公にあたえられようが、主人公はほとんど何もできない状態なので、そんな状況でいったい物語をどんなふうに着地させるのだろうかとおもったら、なるほど、そう来たか。
本格ミステリではないので完全にフェアな謎解きというわけではないのだが、サスペンスミステリとしてはこれで十分だし、事件の真相も十分に意外だ。
次は『ジャクソンヴィルの闇』あたりを読んでみたい。
コメント