いきなり主人公の目の前で騎手仲間が拳銃自殺をする場面から始まる。
優秀な騎手であったけれども精神的に追い込まれ、そして自殺してしまったのだ。
主人公は騎手になって二年目。実力もまだない。
そんな主人公の周りで、自殺や解雇等、騎手たちに対して不幸な出来事が起こり始める。
物語の1/3付近までは騎手達の不幸な出来事の様子が描かれているだけで事件らしい事件は起こらない。なにがミステリなのか何が主人公の妨げになるのかわからないまま物語は進んでいくのだが、やがて主人公にも不幸な出来事が起こり始める。そしてこの不幸な一連の出来事が偶然ではなく人為的に起こされた出来事であることに主人公は気がつく。
犯人はこの時点で明らかになるので、終盤における謎解きという要素はほとんどない。この点でいえば冒険小説であるといっても過言ではない。
犯行動機も犯人が明らかになるのと同時に明らかになるのだが、そんな理由でというか気持ちとしては分からないでもないけれども、だからといって人としてどうかといいたくなるような動機であり、なおかつその執拗さに寒気がする。
この犯人像ゆえに傑作となったのだろう。
コメント