ここしばらくは安定した面白さだったんだけれど、もう少し長いエピソードも読みたいなあと思っていたら今回は一巻では終わらない長いエピソードを持ってきた。
毒虫を壺の中に入れて互いに戦わせて最後に生き残った一匹が最強の毒を持った毒虫になるという蠱毒を持ってきたはいいもののその壺に入るのは毒虫ではなく人。だから人蠱。
そんな世界を崩壊させる補助器具がオークションにかけられるという話なのだが、人蠱という設定もさるものの、このオーディションを防ぐために行動するもの、あるいはオークションに参加せずにこの器具を強奪しようとするもの、とさまざまな人物がオークションハウスに集まり戦い始めるという展開は、人蠱という器具を使わずともその行為そのものが人蠱と同じでもあるということで、どういう決着がつくのか期待するところだ。
一方で秘密結社ライブラのリーダー、クラウスは囚われの身となって、まあ今までもクラウスがいればどんな危機に陥ったとしても万事解決するという安心感があったのだが、今回はクラウスが今のところ行動不能な状態なので、ますます予想がつかない。
さらには今までは登場することもなかったがアメリカ政府のがわの切り札が登場してきて、これが雑魚かと思いきやそんなことはなく、ひょっとしたらクラウス並に強いということで、うまいことバランスをとってきている。
それにしてもいろいろと魅力のある設定を作り出してくれる作者だ。人蠱を奪おうとオークションハウスに侵入したグループは進めども進めども似たような場所を回り続けることになるのだが、これは守る側が迷宮シミュレータというソフトを稼働した結果なのだが、強奪グループは時間操作してこのソフトの効果を打ち消してしまうのだが、ここでサラリと説明されるのが時間操作して減価償却した。という説明だ。迷宮というものを建物と同じくあつかい、そして永遠に迷宮を作り出すことに対して減価償却が発生するのである。作中ではたった一言ですまされるのだが、そんなアイデアがあちらこちらに存在するので密度が高い。
安心して楽しませてもらおう。
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