昔は良かった。というと今は駄目で昔の方が良かったという意味合いなのだが、いっぽうで今は今で良いのだけれども、昔は昔で良かった部分があるという意味での昔は良かったという言い方もある。
今の映画館はいつの間にかシネコンスタイルになってしまった。初めてシネコンが出来たときにはこれはいいなあと思ったわけで、シネコンにはシネコンの良さがあるのだが、昔の映画館も良かった。
僕が住んでいる町は地方なので、その当時の映画館ではよほどの大作でない限り二本立てだった。つまり一本分の値段で二本の映画を見ることができたのだ。もちろん二本立てといっても同時上映される映画は配給会社によって決められるものだから必ずしも両方共見たい映画とは限らなかったが、一方の映画を見たくなければ本命の映画の方だけを見て出ればいいだけの話だ。
そのほかに座る席は自由だったので早い者勝ちであり、上映中の途中退場や途中入場も、マナーという点で考えればあまり良くはないのだが、それでも自由だったし、そもそも、一回入館料を払えば一日中映画館の中にいて、上映される回数分だけ映画を見ることができたのだ。
まあ、二度見ることはあっても三度見ることまではしなかったが、何回でも見ることができたので、上映時間に間に合わなくって途中から入り、二度目の上映で見逃したところまで見るということもできた。そんな見方をして面白かったのかといえば、当時の映画というのは少なくとも僕にとってはそんな感じで今よりも気楽にみることのできるものだった。というわけでどちらかといえば、自宅でDVDを見るような感覚に近いかもしれない。
面白い場面では笑い声が聞こえるし、悲しい場面では泣き声が聞こえる。主人公がかっこよくアクションを決めたときには拍手をする人もいた。
シネコンというスタイルで見る映画もまたいいけれども、あの当時の雑多でがさつな映画の見方も、それができなくなってしまった今を思うと懐かしく感じる。
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