怪獣映画に登場する怪獣を科学的な見地から様々に考察するという本。
かつて柳田理科雄の『空想科学読本』という本があったが、あれの怪獣バージョンといえばいいだろうか。ただ、『空想科学読本』は様々なSF作品におけるSF設定にツッコミを入れるという作風だったのに対して、こちらは筆者自身が怪獣に対する愛があるので批判的にはならないところが大きく異る。
そもそも、怪獣を科学的に考察しようとした場合、この本の中でも書かれているが、スケール問題というものにぶち当たってしまう。ようするに身長が二倍になった場合、体積は三乗、つまり八倍になるので、体重はそれに比例して八倍となってしまう。体が大きくなればなるほど体重はその三乗で増えていくのである段階で身体を支えることができなくなってしまう。
それは映画に登場する巨大怪獣は存在し得ないことを意味するわけで、そこをクリアできない限り怪獣そのものを存在させることが不可能なのだ。
で、筆者が出した結論は「スケール問題は無視する」だ。
なかなか潔い結論でもあるけれども、無理なものには触れないというこの潔さが、全編通して存在しているので、考察そのものが途中で止まって曖昧なままになっている部分も多い。だからどちらかといえば、怪獣が存在するためにはどういう理屈が必要かという部分よりも、おのおのの怪獣の設定の部分から興味深い要素を取り出してその部分を追求していくという内容が多い。
コメント