『九龍ジェネリックロマンス 1』眉月 じゅん

九龍城を舞台とした物語というだけしか予備知識もなしに読んだけれども、どこかで前作『恋は雨上がりのように』と同じく恋の話なんだろうと思いこんでいた。それはタイトルに「ロマンス」とついているからだという部分もあるけれども。
物語が始まって早々、ほとんど何も情報が与えられない。そこで描かれるのは主人公の日常で、それでさえもゆっくりと、そして丁寧に描かれるのでその世界には主人公しか存在しないのではないかとさえ思えてくる。もちろん主人公以外の人物も描かれるのでそんなことはないのだが。
ただ、この世界は僕たちのいる世界と同じだと思っていたら、主人公たちの住む世界の頭上にはジェネリックテラと呼ばれるいわばもう一つの地球が建設途中であることがわかり、さらにあちらこちらでジェネリック○○という食べ物やらなにやらが登場し、地続きの世界ではなくこれはSF漫画なのかという疑問が持ち上がってくる。
その一方で主人公たちの生活の中では事件らしい事件は起こらず、起こるのは主人公が同僚の男性を好きになり始めるという気持ちの変化で、それでさえゆっくりと描かれる。
丁寧に、くっきりと世界は描かれていながらも主人公のその世界は薄い霧の中を歩いているかのようで見えるのに見えないというもどかしさがあって、そしてあっと驚く真相が明らかとなったところでこの巻は終わる。それがなんなのかは次巻を待たなければいけない。

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