同年同月同日、さらには同じ病院で誕生した二人の男の子。育つ環境も違い、母親同士の交流はわずかにあったものの、当人同士が出会うこともなくそれぞれの人生を歩んでいく。
そんな二人の人生を時代を前後しつつも断片的に切り取って交互に40歳の現在にいたるまでを描く。
作中で、人生にはいくつもの選択肢のスィッチがあり、それを押しながらその人の人生が決定していくと登場人物の一人が語る。
同年同月同日という部分がみそでだからこそ二人の人生を交互に描くことで、それは片方が選ばなかったスィッチであり、同時にそれはひょっとしたらあり得たかも知れない人生という部分を想像させる。
だからといってこの物語はSFではない。しかしSF的な手法を持ちいらずにそういった部分まで想像の翼を広げさせるというのは過去に『タイム屋文庫』というこれまたSFではないけれどもSFらしさを感じさせる小説を書いた朝倉かすみらしい物語になっている。いやあ、SF的な設定をつかわずにこういう事ができるんだと恐れ入りました。
とそれはさておいても、そんな二人の人生の選択肢、あるいは選ばなかった選択肢も含めて終盤まで読みすすめていくと、この二人に共感する部分もでてきて、二人のその後の人生も見てみたいという気持ちもしてくるのだが、それはやはり蛇足だといえよう。
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