『私立時計ヶ丘高校タイムトラベル部』小谷太郎

小説の形態をとりながら様々なタイムトラベルの理論についてやさしく解説した本。
すでに知っていることも多かったけれども、数式を使わずにイラストでわかりやすく説明されているのでそれほど悩むことなく理解することができる。その一方で、あくまでさわり、というか表層レベルでとどまっているのでそれ以上の詳しい説明を求めてもそこには書かれていないので、わかりやすくなおかつ専門的な部分まで、というわけにはいかない。
ワームホールを使ったタイムマシンをはじめ、現実的に実現可能な理論を取り上げているのせいもあって、話が進んでいくにあたって、タイムトラベルの困難さが際立ってきてしまうのはやむを得ないところだ。
そしてあまり気にしていなかったことなんだけれども、タイムパラドックスの回避に関して、例えば過去に戻って歴史を変えようとしたとしても過去の改変はできないとした場合、それはようするに、過去を変えようとする自分の意志はそこに存在しない、つまり過去を変えることに成功したとしてもそれは予め定められていたことで、当人は変えたつもりになっていたとしても、もともとの歴史は変えられるということを前提としてなりたっている。なので僕たちには自由意志は存在しないということを意味する、という点だ。テッド・チャンの小説にもそのあたりのことが触れられている作品があったのだけれども、今までたくさんのタイムトラベルを扱った小説を読んできながら、改変不可は自由意志の問題と直結しているということまでは考えることはなかったのだ。
まあそこで改変できないとなってしまうと面白みがなくなってしまうという点もあるんだけれどもね。

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