Washoe1.9さんからお勧めされたので読んでみました。
『Q.E.D.―証明終了―』は評価が高いことも知っていたけれども、僕がその存在を知ったときにはすでに数十巻も刊行されていたので読むのに躊躇してしまい、まあいいかとそれっきりだった。
しかしここでお勧めされたのは46巻。よくよく考えてみれば推理物で数十巻も一つの話が続くわけでもなく、エピソード単位での区切りで読むことも可能なわけだ。しかしそれでもいざ読もうとするとどれを読めばいいのかわからなくなってしまうのでこんなふうに特定の巻を教えてもらうというのはいいきっかけになった。
さてこの巻では二つのエピソードが収録されている。他の巻にまたがることなくきれいに完結しているのでたしかにお勧めしやすい。
収録されているのは「失恋」と「巡礼」の二篇。どちらもシンプルな題名だ。
「失恋」は落語の世界の話で楽屋で500万円が盗まれるという事件。その事件とともに芸というものに対する師匠と弟子との考え方の違い、受けることだけを考えてしまうと自分の人生を切り売りしていくだけになってしまうということが事件と密接に関係していって、物語全体の構図がうまい。
「巡礼」は昭和15年という過去に起こった事件の真相を解き明かすという構図なのだが、解き明かす謎は過去の事件の真相に主眼があるのではなく別のところにあり、その謎を解き明かすために結果として過去の事件の真相を明らかにしなければならず、それでいてそれを解き明かしたところで誰も幸せにはならないというところで、事件の真相そのもののインパクトの大きさもさることながら、題材の使い方がものすごくうまく、たしかにこれはお勧めしたくなる一冊だった。
『Q.E.D.―証明終了― 46』加藤 元浩

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