三巻が出たあたりで作者が、売れ行きが悪いと続きが出せなくなってしまうということをつぶやいていて、世知辛い世の中だなあと思うと当時に、そうかもしれないなあと思った。
と書くと随分と失礼なものの言い回しになってしまうが、決してつまらないという意味ではない。むしろ、面白い。
しかし万人受けはしない内容だなあというのは確かだと思うのだ。
江戸時代を舞台として女性の武芸指南役である別式に焦点を当てた、という時点で目の付け所は面白い。なおかつ彼女たちの口調は現代的で会話の中で平気に現代の言葉が使われる。
等身の低い、丸っこく可愛らしい絵柄でガールズトークが炸裂するコメディ。
そんな彼女たちの中に、男でありながらとある理由で女装し女性として振る舞う男が彼女たちの仲間として加わったあたりから少しずつ不穏な影が滲み出し始める。
百合でもなくトランスジェンダーでもない、いやその要素は多分にあるのだけれども、そっちに振り切っていないあたりが時代に乗り切れなかった一面もあるんじゃないかと思うんだが、じゃあそういった方向へと向かっていったら面白くなったのかといえばそうでもない。
ということで終盤に向けては急いで物語を畳み込む必要があったのか、それまでののんびりとしたペースとは一転、うってかわって急速に収束していくのだが、逆にそれがコマ割りの迫力につながっている。
一巻の冒頭ですでに物語が悲劇で終わることは予告されていて、この巻ではその一巻の冒頭で描かれた場面に向かって収束する。
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