『隠された悲鳴』ユニティ・ダウ

知らない国の小説を読むのは楽しい。
誰が言ったか忘れてしまったが、その国のことを知りたければその国のミステリ小説を読むといいという話がある。一般的にミステリは負の面を描いている。良いところだけを知りたいというのも一つの考えかただけれども、それだけですべてを知ったことになるかといえばそんなことはない。より知りたければ負の面も知る必要がある。
驚愕のアフリカ発サスペンスという触れ込みだったこの本は僕にとって願ってもない一冊で、この本はアフリカのボツワナという国を舞台としてボツワナの人が書いた本だ。
もちろんこの本を読んだだけでボツワナという国を知ったことになるというわけではない。しかし、それでもこの本を読むことでボツワナという国で起こっている出来事の一つを知ることができた。
呪術に使われる秘薬を作るために少女の肉体の一部が必要だ。それも生きたまま切り取らなければならない。
それは儀礼殺人と呼ばれて今でも行われているという。にわかには信じられないことだが、呪術が信じられている文化であればそれは半ば正当化されるのだ。事実をもとにフィクションとして書かれたこの物語は若い人たちによって正義がなされる過程が描かれるのだが、しかしフィクションであっても正義は途中で挫折してしまう。主人公たちの努力も握りつぶされてしまうのだ。
理不尽な世界で僕たちはその理不尽とどう立ち向かえばいいのだろうか。

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