1巻ではまだ気が付かなかったのだが、現代よりも文明が低下している世界で現代知識を持った主人公がサバイバルをするというフォーマットを考えると、昨今の流行りの異世界転生物をアレンジした話なんだなと思った。
もっとも、主人公が冷凍睡眠で未来に行ってしまうということを考えると異世界転生というよりも、古くからあったSF小説の一つのジャンルでもある、主人公が過去にタイムトラベルしてしまい、そこで現代知識を用いて活躍するという、L・スプレイグ・ディ・キャンプの『闇よ落ちるなかれ』とか石川英輔の『大江戸神仙伝』と同じと考えたほうがいいのかもしれない。
ただし、この2つの小説と大きく違うのはやはり主人公が過去ではなく未来に行ってしまうことで、未来だから文明の崩壊度が全く異なることだ。
2巻ではようやく個人ではなく社会が登場する。社会といっても十人程度の小さな社会で、そこで主人公が巻き込まれるものというのが実に面白い。社会と社会がぶつかり合う過程で戦争を回避するために贈り物をするという文化が生まれる。これはアメリカインディアンの儀礼でもあったポトラッチというものでもあるけれども、お互いに自分の大切にしているものを相手に贈り、そして相手もそれと同程度のものを送り返す。それによって戦争を回避するのだ。しかしそれは実に危ういバランスの上に成り立っていて、そもそも片方が戦争をしたいあるいは相手側を自分の物にしたいと思っている場合、相手が同等のものを送り返すことができないほどの価値のあるものを送ってしまえばバランスがくずれてしまう。
そんな物騒な儀式に主人公は巻き込まれてしまう。
はたして主人公は生き延びることができるのだろうか。
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