衿沢世衣子は不思議な作家だ。
というのは僕のなかで衿沢世衣子の作風が一定していなくって新刊が出るたびに驚かされているからだ。
たぶん、最初に読んだ漫画の印象が強くて、その印象をずっと持ち続けていて、でも衿沢世衣子の新作は常にその印象から少しづつ離れているからなんだろう。
で、今回はどうなのかというと、ちょっと痛みがある。第一話は仕事に追われて休む暇もなくせっかく家に帰って休むことができるはずだったのに上司からの電話で会社で徹夜になる女性の話だ。そんな彼女が深夜のコンビニ寄ったところから物語が始まるのだけれど、深夜だというのにこのコンビニ、やけに繁盛している。なのでなかなかレジで精算ができない。時折上司から仕事の電話が入る。そこで、ああ、嫌な話だなあと思っていると不意打ちをくらう。突然異界に連れ込まれる。
えっ!と思っているうちに物語は収束して第一話は終わるのだけれども、それはあくまえ物語のプロローグに過ぎない。続く第二話がようするに第一話だ。視点がガラリと変わって、そして不思議なことが起こる一方で、第一話で感じた嫌さというのは残っていて、でもそれは傍観するしかできない。
それでも暗くならないのはコンビニが舞台であって、コンビニは真夜中でも明るく光っていて、光の箱だからなのだろう。
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