これまたいきなり凄いものが出てきたなあ。
そもそもタイトルにある「にくをはぐ」という言葉からして不穏なんだけれども、これは猟奇的な何かを差しているのではなく、ジビエにおける毛皮をはぐという行為でもある。だったら毛皮にすればいいじゃないかと思うのだが、そこがポイントでジビエと同時に主人公の性同一性障害という要素と密接な関係を持っている。つまりジビエにおける剥ぐという行為と性同一性障害で肉体は女性でありながら心は男性という主人公の、肉体と精神とが同一になるための行為としての剥ぐと2つの意味を持っているのだ。
表題作は性同一性障害を扱ったものだけれども短編集なので他の作品はこれとは毛色が違っている。特に冒頭の作品なんかは、先に表題作を読んでしまうと、あまりの作風の違いに同一人物が描いたのかと思ってしまうが、それは作風の幅の広がりということで、いろいろな話を描くことができる作者なのだ。
表題作だけが突出しているように受け止められがちかもしれないけれども、次の作品が楽しみな作家だ。
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