『無限の住人』が完結したあと、シリアスな漫画よりもギャグ系の漫画ばかり描いている感じもする沙村広明なんだけれども、ギャグを描いても天下一品だよなあと思っていたらとんでもない短篇集が出た。
全12編と短めの短編が多いのだが、最後の話以外は基本的にはギャグなんだけれども、ところどころでシリアスだったり、いい話っぽい物語だったりと縦横無尽で、むちゃくちゃなことをやっていながらも破綻していないところが凄い。「筒井筒」のオチにも驚かされたが、星野之宣のパロディを意識した「惑星ソラリッサ」は星野之宣のSF漫画っぽい設定、それっぽい絵柄で物語りが幕開けしながらも、それ以降はとことんくだらない下品な展開をする、しかし最後の最後でしっかりとしたオチをつけているのであなどれない。
そして、ここまで切れ味のするどいギャグが続いたあとで最後に長めの「イヴァン・ゴーリエ」が待ち構えているのだが、これがとんでもない代物で、どこでギャグが不意打ちのごとく襲ってくるのかと読み始めていくとそんなそぶりもなく、退廃的でダークで幻想怪奇な物語として最後まで突き抜けるのだ。
一巻となっているので続きが出るのだろうけれども、気長に待ちたい。
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