十年以上も経ってからまさか<呪禁官>シリーズの続編が出るとは思わなかった。といっても純粋な続編ではなく<呪禁官>シリーズの主人公の父親の話なので前日譚なんだけど、<呪禁官>シリーズの面白さは主人公の魅力よりもその世界設定にあるので全然問題ない。
今回は出版社も変わり、創土社のクトゥルーシリーズの一冊として出て、もちろんどこから出ようが構わないのだが<呪禁官>シリーズってクトゥルーとの絡みがあったのかなと疑問に思ったりもしたけれども、調べてみたら二冊目でクトゥルーとの絡みがしっかりとあって、自分の記憶力の衰えにがっかりしてしまった。
しかし、自分のような前作の設定すら忘れてしまっている状態であっても、この巻から読み始めても大丈夫な程度に物語の基本設定は説明されているし、作者によるあとがきに書かれているとおり、一度読み始めればノンストップのサスペンス・アクションホラーに仕上がっている。
さらには、登場するキャラクターの過半数は犯罪者だったり世界を滅ぼそうとする側の存在だったりしながらも、どの人物も魅力のあるキャラクターなのだ。難点はそんな魅力的な登場人物が次々と作中で死んでしまうことである。
そしてなによりもこのシリーズに共通しているラストの爽やかさも健在で、シリーズ全体にまたがる巨大な悪の存在こそ無いのだけれどもそれ故に書こうとすればいくらでも書き続けることができる状態でもあるので、今回限りだけではなくたまにはこのシリーズを書いてもらいたいよね。
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