ずいぶんと変わった題名で、その変わった題名具合がいかにも牧野修っぽいネーミングでもある。
題名を見ても、表紙の絵を見ても、さらにはこの本がメディアワークス文庫から出ているという点から見てもどんな内容なのかさっぱりわからないというか想像はつくのだけれども、まさか牧野修がそんな物語を書くとは思えないところに行き着くのでなんとも形容しがたい気持ちで読み始めたのだけれども、裏表紙見返りにこのレーベルでの牧野修の過去の作品の題名が書かれてあって、それが『大正二十九年の乙女たち』だったので、ひょっとしたらと思ったらやっぱりそうだった。
『大正二十九年の乙女たち』と同じ世界設定、『大正二十九年の乙女たち』を読んだ時に主人公たちのその後の様子が書かれていればと感想で書いたのだけれども、時代的には前作から十数年後の時代で前作の主人公たちも登場するので彼女たちのその後の様子も描かれていたので思わず嬉しくなってしまった。
表層レベルの物語は主人公たち三人の少女の友情の物語であり青春譚でありながらも、大正時代がそのまま続いたというもう一つの歴史をたどった日本が舞台でさらに今回は戦争が終わり、アメリカによって統治された日本という設定で、日本の独立を目指す団体や人物、古き時代の文化を生き返らせようとする人々達の間で起こる騒動は前作と同様物語の根底の部分で不穏な要素として横たわっているし、主人公たちの行動が必ずしも良い方向へとは向かわなかったという終盤のエピソードは少し物悲しいのだが、それが「馬鹿」という言葉に緩やかに結びついているだけにより一層切なくさせるのだ。
コメント
異形コレクションに昔ハマっていたんですけど・・・・著者のランチュウという作品は 軽いトラウマになりましたね
higaさん、こんにちは。
牧野修は殆どの場合、グロテスクだったり気味の悪い話を書くのですが、時々こういう爽やかな話を書くので侮れません。