- 著 川島 誠 他
- 販売元/出版社 ジャイブ
- 発売日 2009-04
青春スポーツアンソロジーの第二段が出た。
文庫ではなく四六判だったので単発物だろうなあと思っていたんだけれども、意外と評判が良かったのかな、川西蘭の『セカンドウィンド』のスピンオフが収録されていたってことも影響ありそうな気もするけど。
で、今回も『セカンドウィンド』のスピンオフが収録されている。今回の主人公は南雲真一なのだが、時系列的には本編の後の話になっているところが驚きでもある。『セカンドウィンドII』の後、主人公がどうなったのかが『セカンドウィンドIII』を待たなくてもわかるのだ。
もっとも、今回のメインは南雲真一なのであっさりとしか書かれていないし、主人公がどうなったのかというのはだいたい想像の範囲内なので、こういう形もあっていいのかも知れない。
前回はアイスホッケーという珍しい競技を題材にした須藤靖貴は今回は野球。短編小説は人生の一部を切り取ったものともいわれるけれど、須藤靖貴の話はその切り取り方が面白い。鮮やかというよりも、そんなところを切り取るのかという感じで、断面が面白いのだ。
松樹剛史の「競馬場のメサイア」は題名からわかるように競馬。こちらは題材は珍しいけれども展開はオーソドックスで、バランスが取れている。
誉田哲也の「見守ることしかできなくて」はフィギュアスケートを題材にしたボーイ・ミーツ・ガールの切ない初恋物語……だと思って読んでいたら、とんでもなかった。ラストで奈落の底に落とされるというかそんな結末になるとは思わなかったよ。
小路幸也の「peacemaker」は基本設定がやたらと凝りすぎていて、とてもじゃないけれども短編に投入する設定じゃないなあと思っていたら、案の定、シリーズ化している模様。主人公が放送部で、どこがスポーツなのだと思っていたらしっかりスポーツが登場して、しかも謎解きがあったりするあたりがいかにも小路幸也らしい話。
で、本命の川島誠はというと、これもひょっとしたら「サッカーしてたい」「愛生園」と同一の設定をもったシリーズ物なんじゃないのかと思った。そう思って読んでみるといろいろと背景となる部分が見えてきそうな気もするんだけれども、しかし、単独で読んだ場合は難しいよなあ。
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