- 著 ヴァーナー・ヴィンジ
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2009-04-05
- 著 ヴァーナー・ヴィンジ
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2009-04-05
ひと昔前までは、元奥さんの方が有名だったけれども、今では元奥さんよりも有名になってしまったようだが、それはともかくとして、こりゃ『マイクロチップの魔術師』を解像度を上げたような話だよなあ。
だからといって二番煎じな話なのかといえばそんなことはなく、同じような題材で、同じような展開で、同じような結末であっても違う物語に仕上がっている。まあよくよく考えてみれば当たり前のことで要するに、バックボーンが同じなだけなのだから不思議でもなんでもないことだ。
今よりも進化したネットワーク社会というだけではなく、医学面も進歩しているという多面的な要素が未来社会の展覧会的な雰囲気を醸し出していて、それ故に、物語の展開も一筋縄ではいかなくってあちらこちらに行ったり来たりしているわけだけれども、なんだかそれが面白い……といいたいところなんだけれども、あまり好みではないのでそんなに面白いとは感じなかった。冒頭の国際的陰謀が途中で何処かへ行ってしまうのだ。もちろん要所要所で戻ってくるけど。
そもそも主人公はアルツハイマーから回復した老人なのだが、この主人公、話が進むに連れてどんどんと嫌な奴になっていくのである。
主人公は愛される人物でなければいけない、などということはないけれども、陰謀の方はどうなったと言いたくもなる。
しかし、ヴィンジが描きたかったのは陰謀ではなく、この実に嫌な性格の老人が過去は過去のものとして今を生きようとするまでの話だったのだろう。陰謀もシンギュラリティも図書館戦争も、老人が改心するためだけの舞台装置でしかないのだと思う。
ひょっとしたらヴィンジはこの主人公に自分を投影させているのかも知れないなあと思ったけれども、それは考えすぎか。
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