前巻が出てから完結編の第三巻がでるまでにずいぶんと時間が経ってしまった。本来の予定であればもっと早く読むことができたはずなんだけれども、まあ仕方がない。こうして無事完結しただけでもよかったと思うしか無いのだ。
で、待たされただけあってページ数も多い。これまでの物語をどういう地点に着地させるのか、そして真犯人は誰なのかという謎もあるものの、前巻までの凝った構成をどのようにまとめ上げるのかという部分に対しても否が応でも期待は高まるのだが、謎解きのミステリとしてみた場合、今まで登場してこなかった人物が犯人だったという点で、本格ミステリのセオリーから外れているので少しがっかりしてしまう。個人的には前巻までに登場した人物の誰かが犯人だったほうがミステリとしては満足出来たのだが、逆に考えれば、そういった先入観から外したところに犯人を持ってきたということで意外な人物が犯人だったとも言える。ちょっと苦しいけれど。
しかし、真犯人の悪意、そして巧妙に企てられた犯行故に論理でもって追い詰めることが難しいという状況、そしてそれを打破するための様々な要素は前巻までの物語の中で用意されており、それが予め作者の計算づくだったのかそれとも結果としてうまくいったにすぎないのかはともかくとして犯人を追い詰めていく過程はサスペンスフルでおもしろい。
そしてなによりもこの物語りがロックという音楽に関わった人々の物語として、そしてロック小説として生々しいリアルさを備えた物語であったことだけでももうじゅうぶんな気もする。
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