- 著 ロバート・シルヴァーバーグ
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 1977-08
ロバート・シルヴァーバーグの小説の翻訳が止まって久しい。
めぼしい物はあらかた翻訳してしまったのかもしれないのだが、何となく寂しい気もするのだが、だからといって熱心な読者だったのかといえば全く持って違ったりするのだからあまり大きな事は言えない。
そもそも、一番最初に読んだのが『ミュータント傑作選』に収録された「記憶の呪縛」という短編だったのがいけない。
中学生の頃に読んだのだけれども、中学生といえば勉強で記憶力を酷使しなければいけない時期である。だから記憶力が良くなればいいなあと常日頃思っていた時期なのだ。しかし、「記憶の呪縛」では一度記憶は絶対に忘れない男が主人公でそして忘れることが出来ないこと二対する悲哀の物語なのだ。その当時の自分の考えを全否定してしまうような内容だ。それはもう衝撃的だったわけだ。
で、普通ならばシルヴァーバーグの小説を集中的に読むはずなのだが、私にとってのシルヴァーバーグは何故かこれで終わってしまった。後は『夜の翼』を読んだくらいである。
そしてそうこうするうちに次々と絶版となり、そうなってくると読みたくなってくるのが自分の悪い癖で、とりあえず『いまひとたびの生』を読んでみた。
そしたらどうだ、やっぱりシルヴァーバーグは面白いのだ。
人間の人格を完全に記録出来る方法が開発される。と、そこまではいいのだけれども、その記録した人格を他人の脳内にインストールすることまで出来てしまった未来。肉体が滅んでも、記録した人格を他人の脳にインストールすれば第二の人生を生きることが出来る。
基本的なアイデアはそれだけなのだが、シルヴァーバーグはこの技術から考え得るさまざまな可能性とこの技術がある故に起こりうる事件とを展開していくのである。
あっと驚くような展開が待ち受けているわけではないが、シルヴァーバーグが見せてくれる未来の社会は驚きに満ちているのだ。
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