- 著 山尾 悠子
- 販売元/出版社 集英社
- 発売日 1980-08
ついつい調子に乗ってしまい『オットーと魔術師』を買ってしまう。幾らで手に入れたかは書かないけれども。
いくら山尾悠子が一般的なファンタジーを書くつもりはないとはいっても、コバルト文庫なのでそれなりにファンタジーな話だろうと思っていたら、やっぱり山尾悠子は山尾悠子だった。
「チョコレート人形」では「辰砂」なんて言葉が登場し、ああ、好きなんだねえこういう物が、ってなところはどうだっていい話なんだけれども、唯一この本の中から『山尾悠子作品集成』に収録されている「堕天使」なんかは挿絵があると雰囲気が違って見えて、『山尾悠子作品集成』の中で読んだときとは違う印象でもって味わうことができて、これはこれで思わぬ儲け物だったりする。
連作短編の「初夏ものがたり」では死が扱われていて、なかなか手厳しい話なんだけれども、死者をこちら側の世界に呼び寄せるという行為そのものがビジネスとして扱われているあたりがなかなか面白い話だった。
他の作品と比べると確かに一般的というかマイルドな感じにはなっているけれども、これはこれでなかなか味わいがあっていい本だった……けれども復刊は難しいのだろうなあ。
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