それにしても長かった。
途中で読むのが辛くなりながらも何とか最後まで読み切ることが出来たのは良かったと思う。
しかし、振り返ってみれば全十三巻でそれほど長い話でもない。連載開始から七年近い月日が経ったという点では長いかもしれないが、それ以上に長いと感じたのは物語の中における辛さの多さかもしれない。写真を利用した背景はそれ故に絵としての密度が濃く、と同時にその濃い密度の中で描かれている物語は生きることに不器用な人たちの苦しみの物語で読んでいて息苦しさを感じる。リアルであるという情報量の多い絵でもってこんな苦しみが描かれるのだから長いと感じても不思議ではないだろう。
主人公一家だけヒヨコの落書きのような風貌で描かれ、最初は主人公一家だけが人間ではないヒヨコの落書きのような生命体で、人間社会に溶け込んで生きているのかとも思ったりもしたけれども、そんなSFかファンタジーのような設定ではなく、と同時にそれが何かの比喩なのかといえばそうとも考えにくい部分もあって、結局のところはヒヨコの落書きは苦しみを包み込むオブラートのようなものなのかもしれない。
そんなオブラートに包まれた主人公の物語りが十巻以降、奈落の底へと転落していき、どんな結末を迎えるのかと思いきや、いい意味で裏切ってくれた。
ものすごく切ない、それでいてその切なさの持って行き場がどこにもないというか、読み手自身もそのやりきれなさを物語の中ではなく、自分自身で消化せざるを得ないという物語だったのだ。
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