- 著 R.A.ハインライン
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 1969-02
「むかしむかしあるところに、ヴァレンタイン・マイケル・スミスという火星人がいた」
なんとも、人を食ったような文章からこの物語は始まる。
『時間封鎖』を読んで、これはいよいよ『異星の客』も読まないといけないよなあと覚悟を決めて読み始めたのだが、こりゃいったい何なんだと言うような話だった。
そもそも、アイデアが浮かんで勢いに任せて80万語も書いて、これじゃあ長すぎるってんで22万語に減らしたけれども、まだ長すぎると言われて17万語に減らした。現在、東京創元社から出ている『異星の客』はこの17万語ヴァージョンなのだが、文庫にして780ページ近くもある。最初のヴァージョンはどんだけ長かったんだいったい。というかあらためてハインラインの凄さに恐れおののいてしまった。
しかし、いくら長くっても面白くなければ意味がないわけだが、面白さという点においては、これがまた面白いのだ。しかし、ここでの面白さってのは『宇宙の戦士』のハインラインやジュブナイルでのハインラインや『夏への扉』のハインラインの面白さとは違う。
780ページも費やしてひたすら冗談咬ましているかのような面白さなのだ。
そういえば、スタージョンの「ニュースの時間です」という話を読んだときに、いかにもスタージョンらしい話だなあと思っていたらこの話のプロットをハインラインがスタージョンに提供していたことを知って驚いたのだが、オチまでハインラインが提供していたことを知って二度びっくりしたことを思い出した。
なんていうか、ハインラインといえば右翼とか脳味噌筋肉とか言われるけれども、ハインラインにとっては主義主張とかいったものなんてどうでも良かったんじゃないのか、と思ってしまった。
長さに怯まないでとっとと読んでおけばよかったよ。
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