次元侵略者

次元侵略者 (ハヤカワ文庫 SF 209)

  •  ジョン・ブラナー
  • 販売元/出版社 早川書房
  • 発売日 1976-10

Amazon/bk1

ジョン・ブラナーが日本でふたたび、というか今まで脚光を浴びたことがあったかどうかは定かではないけれども、おそらくこの先、ブラナーの小説が翻訳される機会などなさそうに思えるので、ちょっと応援する意味もこめてこの本に手をつけてみた。
うーん、なんだろう。まだブラナーの小説は三作目なんだけれども、ブラナーの小説って軽いんだよねえ。いや軽いというのは貶しているわけではなくって、『巨人の星』の星飛雄馬が針の穴を通す程のコントロールの持ち主でありながら球質が軽いというのと同じような感じかな。
ブラナーの小説もシリアスな事柄を扱っていながらも、読み心地は重くなく、どちらかというと軽快に近い。
この本は、とある科学者によって多次元世界の扉が開かれ、それぞれの世界との交易が可能となった未来の話だ。しかし、何処かの世界から広がった「白死病」と呼ばれる病気によって地球は壊滅的なダメージを受けてしまったという設定にしてしまうあたりがブラナーの変なところだ。しかも、「白死病」おかげで次元の扉を発見した科学者はその責任を問われ、暴徒に殺されてしまうのである。そしてさらにはその科学者の名前が忌み嫌われる汚らわしい単語として後世に残ってしまうのだ。よくもまあそこまで変な設定を考えつくものだと思うのだが、ブラナーの変さはそれで終わりではない。
多次元の交流にによって壊滅的なダメージを受けながらも、社会は多世界との交易によってなりたっており、<市場>とよばれる組織が牛耳っている。基本のストーリーはこの<市場>における権力争いなのだが、終盤にきてブラナーはこの世界をもう一度ひっくり返してしまうのである。

コメント

タイトルとURLをコピーしました