- 著 柳 広司
- 販売元/出版社 理論社
- 発売日 2009-02-03
それにしても柳広司の引き出しの中にはいったいどれだけの物が詰まっているのだと言いたくなる。
今回は『山月記』をモティーフにした話なのだが、それをミステリに仕立て上げてしまうのは凄いというか、なんでもミステリにしてしまうんだなこの人は。
父親が虎になってしまったという事を聞いて、その血を引く子供である自分も何かのタイミングで虎になってしまうのではないかと心配になった主人公が、父親の謎を追う物語なのだが、『山月記』であるからして当然のごとく漢詩が登場する。
日本語訳も書かれているから普通に読む分には全然問題ないのだが、ある種、暗号の謎解きにも近い面もある。それにしても漢詩というのは盲点に近く、よくそんなことを思いついたよなあと、ただただ感心するばかりだ。いや確かにこれは凄い。
しかし、漢詩の素養が無い身にとっては、柳広司の言いなりになるしかなく、ほんとにそうなのか、それでいいのかと疑問に思ってしまう点も無きにしもあらずなところがちょっと難点かな。
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