- 著 柳 広司
- 販売元/出版社 角川グループパブリッシング
- 発売日 2009-01-24
実在の人物、もしくは架空ながらも有名な人物を探偵役にしないという点では柳広司の異色作ということになる。
探偵役となるキジマという男の設定はなかなかかっこよく、これ一作でお終いにしてしまうには惜しいキャラクターでもあるけれども、しかし、過去の名探偵達のいいとこ取りをしたに過ぎないという面もある。
そういう意味ではキャラクター設定がちょっと過剰に装飾気味でもあるのだが、これは物語中で起こる事件にも言える。
ヘルマン・ゲーリングの自殺に対する謎解きから始まって、探偵役であるキジマの奇抜な脱獄手段、メインとなる看守の死の謎、そしてキジマ自身の記憶喪失の謎、と謎がてんこ盛りなのだ。
まあ、全ての謎がもの凄く意外な真相だったというわけでもなく、中にはちょっと出来すぎだろうと思わないでもない真相もあったりもするのだが、ここまで詰め込まれると圧巻であり、何よりも、読んでいて飽きが来ない。
意外な真相を狙いすぎたせいか終戦直後という時代背景のわりには、狙いがぶれてしまった面もあるけれども、それほど重苦しくならない結末は、これはこれでいいのだよなあと思ってしまう。
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