- 著 梨木 香歩
- 販売元/出版社 新潮社
- 発売日 2008-11-27
先祖代々伝わってきているぬか床から得体の知れないものが出てくるという話なのだが、それはあくまで表層レベルの話だ。読む前は、次々といろいろなものが出てきて、それに対処していく連作短編みたいなものかと思っていた。
しかし、何か出てくるのは最初のうちで、途中からは何も出てこなくなる。その代わりに何処とも知れない場所の不思議な物語が合間に挿入される。村上春樹の『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』もしくはアラスター・グレイの『ラナーク』のような感じといえばそれに近いのだが、メインの話とどう結ぶつくのかということを期待しているとはぐらかされてしまう。明確な答えは書かれないのだ。
あくまでなんとなくそんな感じなのだろうと想像するしかない。
全てに明確な解答がなければ我慢できないという人には憤慨ものの物語で、実を言うと私もそうだったのだが、読み終えてある程度の時間が経ってみると、これはこれでやっぱり良いんじゃ無いかと思えるようになってきた。
スタニスワフ・レムの『ソラリス』を彷彿させるのだが、しかし、やっぱりレムとは大きく違うわけで、これは女性と男性の違いなのかと安易に思ってみたりもするのだが、ソラリスの海には身をゆだねたくはないけれども、このぬか床には身をゆだねてもいいかなあとちょっぴり思ってしまう。
そんな話だ、この話は。
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