忘れな草

忘れな草 (創元推理文庫)

  •  佐々木 丸美
  • 販売元/出版社 東京創元社
  • 発売日 2009-01-28

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どこをどう切り取っても佐々木丸美の世界だ。
主人公は孤児で、幼い頃に引き取られた家庭で、同じく孤児であるもう一人の少女と一緒に育てられるのだけれども、主人公の方だけ何故か虐げられ続ける。
そういう環境の中で育ったのだから性格的に歪んでしまっても不思議ではないのだけれども、佐々木丸美の主人公は歪まない。歪まないどころか一直線でありそして孤高の道をひたすら突き進む。冷静に考えれば身近な所にこんな主人公がいたら嫌だなあと思ったりもするのだけれども、佐々木丸美の描く世界において、そして佐々木丸美の紡ぐ文章の中では何ともいえない酩酊感があり、酔いしれてしまうのだ。
前作に登場した人物も顔を出し、それが単なるお遊び程度の物かと思っていたらそんなことはなく、前作と密接に関係しており、裏で何が行われていたのかということが徐々に明らかになってくる。そして明らかになればなるほど、その人物関係の複雑さや事件の複雑さ、そして今回は殺人事件など何も起こらない癖にやけに複雑怪奇な事件が顔を覗かせるのだ。
もはや文章においても物語においても全力疾走の佐々木丸美ワールドである。正直、ついていくのが辛かった。

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