- 著 木地 雅映子
- 販売元/出版社 ジャイブ
- 発売日 2009-01-10
『悦楽の園』を読んだとき、木地雅映子が舞い戻ってきたのかそれともただ通り過ぎただけなのか気になったのだが、ああ、やっぱり木地雅映子は舞い戻ってきたのである。
とはいえども、『悦楽の園』の後でいったいどんな世界を突きつけてくるのか心配だったのも事実である。
で、今回の新作を読んでみるで驚いた。やけに軽いというか、扱っている内容はやはり木地雅映子らしい内容ではあるが、文体そのものも変化してライトノベルといってもいい内容なのだ。
さすがに木地雅映子であっても毎回毎回、剛速球を投げつけるのは難しいか、とも思ったりもしたし、このレベルであれば木地雅映子が書かなくっても他の人が書いているじゃないかとも思った。
しかし、そう思っていられたのは第四章の終盤までだ。
第四章の終盤で、脇役の人物がとんでもない発言をしたあたりから豹変した。脇役の、母子家庭という設定は別の登場人物に対する対比的な設定に過ぎないと思っていたのだが木地雅映子はそんな安易なことはしなかった、いや脇役といえども、自分の人生においては主役だ。物語の中では視点人物として描かれないだけだ。
誰もがさまざまな悩みを抱えているわけで、そこに主役も脇役も違いはないのである。
そして驚愕の第五章。
第一章ではまだローギアに過ぎず、章を進めるごとにギアを上げていき、第五章ではトップギアだ。
ここまで問題のある悩みを抱えた人物を登場させて、いったい何をしようとしているのだろう。
コメント
こんばんは。
そ、そんなすごい作品だったんですか、これ。
だとしたら、タイトルで損していますよね。
『氷の海のガレオン』はたしかにすごい作品でしたが、本書は「タイトルがいかにも、だよなぁ」と思っていたのでした。
これは買わないといけませんね。
記述師さん、こんにちは。
>「タイトルがいかにも、だよなぁ」
そうですね、一見するとライトノベルっぽくも見えるのですが、実際に読んでみると、やっぱり『氷の海のガレオン』の作者だと実感させられます。